南北で違った食文化を持つイタリア料理


地域毎によって様々な特色を持つイタリア料理ですが、その長い国土から、特に南北で違いが顕著になります。イタリアンといえば私たち日本人にも馴染みが深いものですよね。しかし、実は日本で食べられるイタリア料理は南のものが多く、北イタリアの料理はそれほど知られていません。

この記事では南イタリアと北イタリア、双方の特徴と料理をご紹介します。

 

ー南イタリアと北イタリアの食文化がまったく異なる理由

イタリアの面積は30.1万平方キロメートルと、日本の5分の4程度ですが、(日本の面積は、37万平方キロメートル)南北に細長くのびているため、変化に富んだ地形をしています。またその地域によって風土や特産物も異なるため、料理に関してもかなりの差があるのです。

また、イタリアが統一される1870年まで、各地域はそれぞれが独立していた国家でした。そのため、地域毎に伝統的な食文化や独自の料理があります。特に南イタリアと北イタリアの料理を比べてみると、その違いがはっきりとわかってくるのです。

 

ー南イタリア料理の特徴と代表的な料理

・南イタリア料理の特徴

イタリア南部は地中海性亜熱帯地域に属し、オリーブやトマトの栽培に適した気候を持ちます。そのため南イタリア料理は、オリーブオイルとトマトをよく使うという特徴があります。ちなみに日本でも親しまれているトマトソースは、南イタリア最大の都市であるナポリにおいて18世紀に誕生しました。

またイタリア南部は地中海に突き出した形をしており、三方を海に囲まれているため、魚介類を使用した料理も多くなっています。

これらの食材をオリーブオイルやバジル、塩やペッパーを使ってシンプルに調理するのも南イタリア料理の特徴です。おそらく多くの方が思い浮かべるイタリアンのイメージと合致するかと思いますが、これは先述の通り、日本では南イタリア料理がメインに普及しているためです。

南イタリアのパスタは、乾燥パスタを使うことが一般的です。もともと乾燥パスタは、南イタリアで誕生したものであり、地中海性亜熱帯地域の特性である、長い日照時間と乾燥した空気を利用して作られています。そして昨今では、多種多様の乾燥パスタが生産され、多くの人に食べられているのです。

北部よりもパスタの消費量は多く、パスタのゆで加減も南下するほど、アルデンテが好まれる傾向が強くなります。

 

・南イタリアの代表的な料理

◆ナポリピッツァ

もちもちした食感が特徴で、具材をできる限り少なくし、生地本来の風味を楽しむことを目的とした料理です。バジル、モッツアレラチーズ、トマトソースを具材としたマルゲリータや、トマトソース、エキストラヴァージンオイル、にんにく、オレガノのみが具材である、マリナーラなどのいシンプルなピッツァが有名です。

 

◆アクアパッツァ

もとは漁師が船の上で食べていた、カンパニア州の郷土料理です。魚介類を水、トマト、白ワイン、オリーブオイル、にんにく、イタリアンパセリで煮込んだもので、海の幸が豊かな南イタリアを代表する料理といえるでしょう。

 

◆モッツアレラインカロッツア

モッツアレラインカロッツアは、カンパーニャ州の郷土料理で、パンの間にモッツアレラチーズ、アンチョビを挟み、卵をつけて焼いた料理です。パンからあふれるトロトロのチーズが絶品です。

 

◆オレッキエッテ

耳に似た形をしているパスタです。イタリアのプッリャ州にある郷土料理であり、長時間ゆでたブロッコリーを潰してオレッキエッテのくぼみに詰め、トマトソースで煮込んで食べることが一般的です。

 

◆フレーグラ

フレーグラは、硬質な小麦粉に水または卵を加え、手のひらで混ぜながら小さな粒上にし、それをトーストしたパスタです。ムール貝やハマグリ魚介のスープを加えて一緒に煮込む際に用いられます。

 

◆シャラティエッリ

イタリア南部にある、アマルフィ地方でよく食べられているパスタで、四角く平たい形状で、水と卵を使わず牛乳を使っているため、ツルッとした食感が特徴です。魚介類とトマトソースを絡めて食べます。

 

ー北イタリア料理の特徴と代表的な料理

・北イタリア料理の特徴

アルプス山脈に近い北イタリアは冬の寒さと湿度の高さが特徴で、酪農が盛んに行われています。寒波に負けないよう身体を温め、エネルギーを蓄える必要があるので、バターやチーズを大量に使った料理が多いことが特徴でもあります。北イタリアのチーズでは、長い熟成期間を必要とするパルミジャーノ・レッジャーノが有名です。

また北イタリアには水田も多いので、リゾットなどの米料理が豊富にあり、羊や牛肉を使った料理も有名です。

南イタリアとの大きな違いは、バター、生クリーム、チーズはお肉を多く用いるため、こってりとした濃厚な味わいの料理がほとんどの割合を占めることがあげられます。

先述したとおり、日本では南イタリア料理がイタリア料理として認識されているため、北イタリア料理はピンと来ない方が多いかもしれません。しかし昨今では、北イタリア料理を日本で専門に提供しているお店がある背景もあり、徐々に日本に浸透しつつあります。

 

・北イタリアの代表的な料理

◆オッソ・ブーコ

オッソ・ブーコはミラノやロンバルディア州を代表する郷土料理です。仔牛の後ろ足の骨付きすね肉を輪切りにし、トマトソース、白ワイン、ブイヨンや香味野菜でじっくり煮込むことが特徴です。なお、じっくり煮込んだ骨付きすね肉は、骨髄まで美味しく食べることが可能となります。

 

◆アニョロッティ・ダル・プリン

プリンとつきますがデザートではなく、ラビオリというイタリア北部ピエモンテ州でよく食べられている詰め物パスタです。アニョロッティの中にミンチした肉を入れ、野菜と一緒に煮込んで造ります。バターを使ったソースとの相性は抜群です。

 

◆ビステッカ

ビステッカとは牛や豚、鳥や馬などの肉をシンプルに焼き上げる料理で、イタリアンステーキともいわれます。最近では肉イタリアンという言葉も流行っていますが、その最たるものの一つと言えるでしょう。

 

ーまとめ

同じイタリア料理でも、南北で大きな違いがあることが分かりますね。南北に長い風土と多様な文化が入り混じった結果生まれた南北イタリア料理は、それぞれがそれぞれの魅力を持ちます。特に北イタリアの料理はあまり馴染みがない方が多いと思いますので、ぜひこの機会に味わってみてはいかがでしょうか。